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執筆者の写真T. Abe

フランスの組み込み保険スタートアップNeatが5,500万ドルを調達

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フランスのインシュアテックスタートアップ、Neatが資金調達で成功を収めた。パリを拠点とするこの企業は、5,000万ユーロ(約5,500万ドル)を調達し、その一部は負債ファシリティを含んでいる。具体的には、60%が株式で、残りの40%は負債となる。この手法により、Neatは株式3,000万ユーロに加え、2,000万ユーロの負債を獲得した形だ。現下の資金調達環境において、これほどの大規模な調達が話題になることは少なく、このニュースは特筆すべきだ。


Neatが提供する保険商品は、他の企業が自社の顧客に提供する保険契約をサポートする仕組みを持つ。保険業界の専門用語でいえば、「アフィニティ保険」と呼ばれる分野にフォーカスしている。例えば、スマートフォンを購入した際に、落下や破損に備えた保険を一緒に契約できる仕組みだ。この他にも、旅行保険やコンサートチケットの保険、家電製品の延長保証なども対象となる。


Neatの革新は、組み込み保険に焦点を当て、パートナーの小売業者が自然な形で保険商品を販売できるよう支援する点にある。小売業者は保険商品を販売することで手数料を得るが、保険の複雑なリスク管理には関わらず、リスクはNeatが引き受ける形だ。具体的には、Neatは保険業界でいう「総代理店」として機能しており、保険契約の構築や管理を担いつつ、リスク自体は再保険会社に委ねている。


Neatの共同創業者兼CEOであるMaximilien Dauzetは、このビジネスモデルについて次のように説明している。「私たちは、いわゆる会社の『小切手帳』を持っている状態です。つまり、料金設定や商品設計を自社で行い、そのリスクは信頼する保険会社や再保険会社にアウトソーシングする仕組みです。」こうしたフルスタックアプローチにより、Neatは多様な保険商品を迅速に提供できる点で他のプレーヤーと差別化されている。例えば、旅行保険は年齢や目的地によって料金が異なるべきであり、スマートフォンの保険もデバイスのモデルや再生品かどうかで価格設定が変わるべきだと考える。


また、Neatは単一の保険商品に依存するのではなく、複数の垂直市場をターゲットにしている点でも特徴的だ。共同創業者でCOOのFabien Cazesは、「私たちは10の垂直市場にまたがり、リスクを分散させることで、保険ビジネスにおける安定性を高めています」と述べている。実際、同社は旅行保険から補聴器保険まで幅広く提供し、さまざまなパートナーと連携している。たとえば、Floaのクレジットカードやデビットカード、Pierre et Vacancesの旅行保険、AfflelouとKrysの補聴器保険に保険商品をバンドルしている。


現在、Neatは1,500社以上の流通パートナーを抱え、これらのパートナーを通じて100万件以上の保険商品を販売している。この成長の背景には、Hedosophiaが主導するシリーズAラウンドの資金調達がある。このラウンドには、Alma Mundi VenturesやETFS、Athletico Venturesといった投資家も参加しており、彼らはNeatの成長ポテンシャルに期待を寄せている。


このフルスタックな保険ビジネスモデルは、保険業界の既存の慣習を革新する可能性を秘めている。特に、レガシーシステム上に構築された従来のブローカーが提供する保険商品とは一線を画し、顧客の多様なニーズに応じた柔軟で透明性の高い商品設計を可能にしている点が注目に値する。また、保険商品を販売する小売業者にも利益をもたらす構造が、長期的なビジネス成長を支える要因となっている。


今後の展望として、Neatのさらなる市場拡大と技術的進化が期待される。特に、米国市場への進出が見込まれ、AIやデータ分析を駆使した新しい保険商品の開発が進むことで、保険業界全体のデジタル化を加速させる可能性があるだろう。

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